09トップからいきなり手を使う   悪いクセがある方は

切り返しでもっとも良くないパターンは、「トップからいきなり手でクラブを降ろす」というクセです。この症状がある人は、かなり重い病状であるといえます。このタイプの方は、手を使ってダウンを始動するのが普通の感覚になっていますので、自分で「手を使っているかどうか」を判断するのは至難のワザです。切り返しの動作は複合的であり、複雑であるため、多くの場合、どさくさにまぎれてやってしまうので、よけいにワケがわかりません。このタイプの方は、信頼できる人に見てもらって判断してもらうのがいいでしょう。

プロのレッスンが受けられている方は、重症の「手でダウンを始動するスウィング」の人は少ないようです。やはりレッスンプロに習うのはムダではありません。レッスンを受けるのが嫌いな人は、少なくとも友だちとか誰か他人にスウィングを見てもらって、客観的な意見を聞くことをおすすめします。

トップからいきなり手を使うクセを自分で何とか直したいという場合、ひとつの方法としては、まず、目を閉じて素振りして、じっと体の動きに「聞き耳」を立てましょう。トップから手を使っていないかどうか、心を研ぎすまして観察しましょう。

自分で判断するのはカンタンではありませんが、ここに問題のある方は切り返しで脱力するということです。それはまた、上下同時はダメということであり、微妙な宙ぶらりんな瞬間をつくるということです。これは、本サイトでは何度も何度も書いてきました。しつこいほど何度も書いているのは、それがスウィングのなかでもっとも大切なことのひとつだからです。

くり返しになりますが、切り返しでは、脱力する瞬間、手元がきわめて不安定な状態になります。この不安定な状態、表現はいろいろあり、いろんな本に書いてあります。。宙ぶらりんな状態であり、無重力状態であり、「間」でもあります。この中途半端な感覚がわからない方は、おそらく脱力ができていません。なにはともあれ、脱力の練習に専念してください。

ここで推奨するのは、ダウンの始動において左脇をよく意識することです。腕と肩でつくる三角形があるとします。切り返しでは下半身から始動し、下半身が肩を引っ張り、肩が手元を引っ張ります。このシーケンスが重要ですが、それは腕が脱力していなければ、無意味です。肩が手元を引っ張るとき、手元は引っ張りに抵抗してはいけません。手元で拮抗をつくろうとする人もいますが、それは厳禁です。手元は脱力です。そうすると、肩が手元を引っ張るとき、ほんの少し、クラブに慣性があって、クラブを置いてきぼりにすると、左脇が締まります(自分で締めるのではなく、肩の引っ張りで、結果的に締まる)。この左脇の締りを意識してください。

左脇が自然に閉まることで、手は体より遅れます。それが、手のいい位置です。左脇の締まりを始動の合図にしてください。

左脇を締めてダウンスウィングを始動

●クラブをもってもらって、切り返すドリル
手でいきなり下ろしている懸念のある方は、クラブを誰かに手でもってもらって、切り返す練習をしてみてください。腰で肩を引っ張り、肩で手元を引っ張ります。このダウンの始動の動きは、クラブを手でもってもらって、クラブが固定されていると簡単です。これで素直に下半身リードの始動になりますが、このとき、手で拮抗させるような動きは一切ないことを理解してほしいです。手で拮抗させている人が、そのことに気づくためのドリルだと思います。
クラブをもってもらうドリル

08逆パワー・ドリル[3]  1本足打法

世界中のさまざまな練習の中で最もすぐれたベスト・オブ・ドリルを選ぶとしたら、何が選ばれるのでしょうか。私なら迷うことなく、1本足打法です。

1本足打法は「体でヘッドを返すスウィング」を習得するためのヒントがいろいろ詰まったスグレモノの練習です。勝手な想像ですが、野球の王監督やイチロー選手は1本足で打つことによって、知らず知らずのうちに体幹の筋肉の力を最大限に引き出すコツをマスターしているような気がします。

練習は、ボールは置かず、素振りで行います。

  1. まず、テイクバックし、そのとき右足1本に体重をのせて、フラミンゴの姿勢をとります。
  2. 次に左足を大きくステップして踏み込みます。
  3. 左足をベタッと着地させたとき、肩が開くのをググッとこらえるのが最大のポイントです。
  4. そして、軽くダウン。

左足が地面に着くとき、肩が開くと1本足ではまったくスウィングにならないことを理解してほしいです。肩を開かないようにするには、体幹の筋肉をどう使えばよいのかを自然に体で感じてもらえると思います。

野球との違いは、野球ではステップした後、腰も肩も開きますが、ゴルフでは腰は開いても、肩は開かないことです。そのためには、ゴルフでは切り返しで肩の回転を抑える動きが必要になります。これがゴルフのむずかしさであることを理解してください。自然にスウィングすれば野球のようになり、そのままのスウィングではゴルフの場合、肩開き打法になってしまいます。そこで、肩を開かないために、野球以上に踏み込んだときの抵抗が重要になります。野球以上に肩の開きを抑える動きを体幹でおこなわないと、タメ打ちにはなりません。

スウィングのリズムを「チャー・シュー・メン」と仮定すると、「チャー」の部分がテイクバックからフラミンゴまで。「シュー」の部分が左足の踏み込み。「メン」でダウンスウィングです。このとき「シュー」の部分をとくに重視して、ゆっくりと確実にしかもパワフルに体幹の筋肉を使って行うのがコツです。

足の裏が地面につくところをスローモーションにように感じてください。左足を着地させ、徐々に体重を移し、50:50まで移します。そのとき肩が開こうとするのは当たり前ですが、とにかく開かないように耐えると、結果的に平行移動の理想的な切り返しの形になります。

これらの一連の動作がきちんとできていないと、1本足打法ではなかなか打てないところが、このドリルのすぐれている点です。いつの間にか、大きな筋肉の使い方がわかってしまうというわけです。

リズムよく、やってください。

07ボールを打たない練習が、  退屈かもしれませんが、効果的です。

本章でいままで紹介したドリルはボールを打たなくてもいいです。もちろん、打ってもかまいませんが、打つ必要はありません。

まずは、練習の目的をしっかり意識しておきましょう。切り返しの3つの動作を覚えることが目的です。どこの筋肉に力を入れて、どこの筋肉の力を抜くか、正確に理解し、実践できるようになってください。

この段階で、まっすぐ飛ばそうなどとは決して考えてはいけません。即効で、うまくなろうとするのは禁物です。スウィングの形も問題ではありません。拮抗と脱力さえできるようになればOKです。

最初に紹介したドリルの内容は、単純すぎると感じるかもしれません。しかし、「なぜ自分がこのドリルを行うのか」という目的意識がいままでと変われば、同じドリルがまったく新しいドリルに生まれ変わります。肝心なのは、目的意識です。3つの動作をマスターするという目的をしっかり理解して、きっちり目的を達成するまで行ってください。ドリルの内容を理解しただけで、やったような気になるのがいちばんよくないことです。アタマではなく体で覚えるまで何百回もくり返しましょう。

小さなゴルフボールに小さなクラブヘッドを命中させようとすると、どうしても器用な手の動きが出てしまうのが自然の摂理だそうです。ということは、ゴルフスウィングの練習は自然の摂理に逆らって、人為的に行う必要があるということになります。とくに体に染みついた切り返しのやり方を直そうというのですからなおさらです。ですから、ボールを打たないことを推奨します。ボールに当てようとするのが、そもそも「手でヘッドを返すスウィング」のはじまりだからです。

逆パワー打法に改造しようと決めたら、3カ月ぐらいはボールを打たないというぐらいの固い決意をもってやってほしいものです。そうでないと、以前の切り返しを捨てるのはむずかしいと思います。「手でヘッドを返すスウィング」から「体でヘッドを返すスウィング」に改造するのは、大げさではなくスウィングのコペルニクス的転回です。

正直にいって、誰でも大丈夫というだけの自信はありません。50歳以上の方はむずかしいかもしれません。当メソッドを信じるか、信じないかはあなた次第ですが、強固な意志をもって取り組まないと、成否はわからないと思います。拮抗を身につけるのは、地道で退屈な努力が必要ですが、信じてトライしてください。

06逆パワー・ドリル[2]  足閉じ+ガニ股、ハーフ素振り

逆パ・ドリル[1]で練習した切り返しでの逆パワーの動作をスウィングの流れのなかでおこないます。足を閉じて、クラブをもってハーフスイングの素振りです。

  1. 足を閉じて、クラブをもって構えます。
  2. ハーフトップをつくり、切り返しで逆パの3つの動作をおこないます。
  3. 切り返しでは、ややしゃがんでガニ股になります。ここで、必死にきばる。
  4. 次の瞬間、ラク~にダウンスウィング。
  5. 全体はリズミカルに。
    イチでテイクバック、ニーで切り返し、サンでダウンスウィングです。

足閉じ+ガニ股、ハーフ素振り

ポイントは切り返しです。切り返しのとき、素早く逆パ・ドリル[1]の状態をつくります。このとき、瞬間、ガニ股になるのがポイント。拮抗する力がはたらいたとき、肩が開くのをこらえることで、自然にガニ股になるのがいいです。

切り返しのとき、クラブは垂直。垂直になったとき、一番クラブの重さがなくなるからです。そのとき、腕を止めてもいいです。ただし、ダウンの初動は絶対に腕で始動してはいけません。必ず体の回転で手元を引っ張ります。

切り返しのとき、3つの動作を同時にやるのがむずかしいですが、一連の動きのなかでこれをやります。

この動作は、単純化していうと、切り返しの瞬間、息を止めて、体幹にぐっと力を入れて、ガニ股にするイメージです。もちろん、手や腕は脱力します。ダウンスウィングは気楽な感じで。アウトサイドインになってもかまいません。

ハーフスイングの一連の動作のなかで、うまく逆パワーが入れられるようになるまで練習してください。

05切り返し拮抗ドリルの解説と  若干のヒントなど

●体幹に力を入れながら上体の力を抜くことをセットで覚える。

 

切り返し拮抗ドリルでは、3つの動作のうち「抵抗=逆回転」がむずかしいと思いますが、頑張ってください。これが最も重要な動きであり、苦労する価値が十分にあると思います。

左足を踏み込むと同時に、肩が開かないように体幹の筋肉を使って「こらえる」わけですが、そこに左サイドを脱力して「伸ばす」動きをプラスします。つまり、切り返しでは、「こらえる」と「伸ばす」というふたつの動作が複合した動きを行います。「伸ばす」ためには、力を抜かなければならないのです。

左脇腹から左の広背筋、左肩、左腕、左手へとつづく連続した左サイドの筋肉をリラックスさせてスーッと「伸ばし」ます。そして、筋肉を伸ばしたついでに、関節も一緒に柔らかく伸ばします。これがゴルフスウィングで重要です。グリップの力を抜いて、ゆるゆるに握るのではありません。グリップは適度な力でしっかり握っておかなければなりません。全身をリラックスさせてラクにするのでもありません。それだと、コンニャク打法になってしまいます。ダウンスウィングの直前、左サイドの各関節を伸ばすことによってはじめて、ギアがリバースから1速に入れ替わり、下半身によって引っ張られるのに対応できる体制が、上半身の側で整います。

ところで、ゴルフではリラックスすることの大切さが強調されます。力の入れ方や入れるところが知りたいと思っていても、レッスン書は「力を入れるな」というアドバイスを耳にタコができるほどくり返します。が、「力を入れるな」というのは誤解を招くアドバイスではないかという気がします。ここぞというとき何がなんでも飛ばそうとしてリキむために悲惨な結果を招くことは、ゴルファーなら誰でも経験しています。しかし、だからといってどこにも力を入れない「コンニャク打法」がいいということにはなりません。

美しいフォームのかげに隠れた見えないところでダイナミックに力を込めているのがゴルフスウィングです。そうしなければ、あれほどドライバーは飛びません。あれほどダイナミックなタイガー・ウッズが、どこにも力を入れずにスウィングしているはずがないと思いませんか。

従来のレッスン書では、アドレスでリラックスせよと教えますが、それだけでは力を抜くというだけです。間違ったところには力を入れるな、正しいところに力を入れよ、というのが正しいアドバイスでしょう。ただし、間違ったところとはどこなのか、正しい力はどのように入れるのかをきちんと説明したメソッドは、いまだかつてありませんでした。それを本メソッドが詳細に解説しているわけです。

「体幹の筋肉を使った逆回転」によるねじりの動作と、リラックスして脱力することは矛盾します。矛盾するふたつの動作を両立するためには、上半身では力を抜いて、体幹では力を入れます。体幹の筋肉はONですが、上体はOFFであり、2つを使い分けるのです。広背筋や左肩のほうではスーッと力を抜いて、下のほうの大腰筋はグッグッと力を入れるのです。

部分によってONとOFFを使い分けるのが正解です。使う筋肉と休む筋肉を確認して、何度もドリルをやって記憶します。ただ、大腰筋をきちんと意識するのはむずかしいので、腹筋も動員して肩がひらくのを「こらえ」てもいいです。結局、ゴルフスウィングの切り返しで力を入れるのは、体幹です。そこに力を入れて、ゴム板のねじりがほどけるのを防ぐようにがんばるわけです。

 

●実感レベルでいうと、けっこう不快感あり。

 

「切り返し拮抗ドリル」は、むずかしい動作です。下半身の動きと上体の動きが逆なので、不可能と感じる方もおられるでしょう。とはいえ、これを必死に練習してください。

下半身と上半身を逆方向に「ねじる」のを体幹でやるのは不自然というか、体に無理のかかるものです。胴体が強烈にねじられるのは、気持ちのいいものではありません。苦しい動きだからこそ、普通のゴルファーはドサクサにまぎれて素早く切り返しを行ってしまうのでしょう。つまり、知らないうちに「ねじり」をマスターしていたというようなラッキーな出来事は起こりにくいと思われます。いいかえると、気持よく振っているだけでは、自然にマスターしにくい動作だといえます。

私の場合、脇腹から内蔵がひきつるように痛く、腸ねん転になりそうな気がします。大腰筋は胴体の中を貫通しており、腸の配置にかかわっていると思います。大腰筋をこのように「逆に」力を入れるのは、普段の生活ではやる機会がほとんどないのだと思います。トレーニングを3カ月ほどつづければ、徐々に筋肉が付いてきて、少しずつラクになってくるでしょう。慣れてくれば、素早くできるようになると思います。

切り返しの練習としては、クラブヘッドを他人に持ってもらってダウンスウィングを始動するドリルがあります。それもとても有効ですが、固定されたクラブヘッドのドリルでは、下半身は正方向(インパクト方向)に引っ張る力の入れ方です。それをやったとき、「逆に使うこと」にハッと気づく人もいると思います。肝心なのは、逆方向に力を入れることです。それは下半身ではできません。体幹でおこなうのです。逆方向に力を入れることで、大腰筋はクラブを固定する側の役割を演じます。つまり、気づきは、正方向に踏み込みながら、クラブを固定する第三者の手の働きを体幹で行うということです。

04切り返し拮抗ドリル

いわゆるアイソメトリックスで、切り返しのカタチを覚え、必要な筋肉を鍛えるドリルです。 クラブをもってもいいし、もたなくてもいいです。ボールは使いません。

アドレスのカタチをつくってから、軽くテイクバックし、1本足打法のように、左足を上げます。そして、5割から7割程度のトップオブスウィングのカタチをつくります。そこらから、左足を踏み込みます。そのとき、肩が開こうとしますが、ググッとチカラを入れてこらえます。

上下が拮抗した状態を5~6秒ほど保ち、静止します。これを5~6セットほどくり返します。切り返しのカタチをキープし、背中に目いっぱいチカラを入れた状態で静止するのが練習です。

切り返し拮抗ドリル

こらえるときは、もちろん両足ともにベタ足で、なおかつガニ股です。「グッ」とではなく、「ググッ」とチカラを入れると書いたのは、瞬発力のようなチカラの入れ方ではなく、やや継続的にチカラを入れなければならないという意味です。一瞬チカラを入れただけで、すぐにねじりのパワーを放出してはいけません。放出するのはもったいないという気持ちで、ちょっとキープします。  ワキ腹がねじれて、苦しい状態になっていれば、いい感じです。体の内側で自家発電をしているような感じで、スカッとする爽快感はありませんが、そういうものです。

踏み込むときは、若干沈み込んだほうがいいです。30センチぐらい沈み込んでください。 肩が開かないようにしたまま、全体を左へ平行移動してもいいです。左へ重心をのせるので、それはいちおう自然なことです。

両足が自然にガニ股になっているかもチェックしてください。体幹の筋肉を使うことで、オートマチックにガニ股になっていなければなりません。

手は何もしない自然な状態に放置します。自分で手を空中に止めるのでもありません。この状態をつくるのがむずかしいわけですが、それは、逆パワーとセットで練習します。手を中途半端に置く瞬間、それは脱力ということです。そのとき、体全体が何もしないのではなく、下半身と上半身を大腰筋により思いきり拮抗させています。ですから、拮抗したとき、同時に脱力するというようにセットでおこないます。

これを毎日くり返し、切り返しでどこに力を入れ、どこの力を抜くのか、覚えます。スウィングの一連の動作のなかで、自然にできるようになることが目標です。

03「回転」「抵抗」「脱力」  3つの動作を同時に行うのが切り返し

前回は、逆パワーの核心部分である、大腰筋の使い方について説明しました。もっとも大切なところです。

切り返しでは、左足を踏み込むことによって、下半身は正回転をはじめます。そのとき同時に、大腰筋(だいようきん)を使って、肩が開くのを「こらえ」ます。さらに、そのとき、左脇腹から左広背筋、肩、腕まではラクにして脱力し、「伸ばす」を同時に行います。<下半身>、<大腰筋>、<左脇腹から左広背筋、肩、腕>、合計3つの動きを同時に行うのが、ビッグマッスルで打つための最大の秘訣です。

下半身は正方向への「回転」です。しかし、大腰筋のほうでは、インナーマッスルを使って(腹筋も総動員する)、肩が開くのを「こらえ」ます。これは逆方向へチカラを入れる「抵抗」です。こうして2方向のチカラを拮抗させます。しかも、同時に、左の脇腹から広背筋、左肩、左腕、左手首までの一連の筋肉はチカラを抜き、関節もすーっと伸ばします。これは「脱力」です。「回転」「抵抗」「脱力」おたがいに矛盾するようなこれら動作を、すべて一瞬のうちに行うのが切り返しです。

これは一般にいわれている切り返しでの「逆回転」とは異なります。一般にいわれている「逆回転」とは、テイクバックが完了する前にいち早く左足を踏み込むことによって、上半身と下半身を逆回転状態にせよ、というアドバイスです。上半身はまだテイクバックしているのに、いち早く下半身を踏み込むわけです。これはやめてください。アベレージゴルファーがこれを行うと、打ち急ぎの原因になると思います。

上半身と下半身のタイミングのズレを利用するのではありません。静的な状態のまま自らの下半身と大腰筋を使って、内側からパワーを絞り出し、逆方向の2つのチカラを拮抗させるような動きです。ダイナミックな動作やパワフルな動作ではありません。

下半身を先行させ、抵抗と脱力はそれに追随します。

イメージ的な表現で申しわけないのですが、「体の内部で雑巾を絞るような感じ」あるいは「体の内部で切り返す」という感じでしょうか。体の内部というのはインナーマッスルである大腰筋です。切り返しは下半身から行いますが、そのとき同時に、大腰筋でも切り返し動作が行わなけれていなければならないということです。大腰筋を使って、肩を開かない状態をキープしたまま胴体の中でギヤをバックからローに入れ替えるような感じといいましょうか。見ためには静的ですが、大腰筋は必死になって力を入れています。大腰筋での切り返し動作は、2つのチカラが拮抗しているので、外部から動きは見えません。ですから、素人がぼんやり見ても、チカラを入れているのかどうかさえわかりません。

岡本綾子プロが切り返しで一瞬見せる、リキんだような表情、あの感じが参考になると思います。あの瞬間、からだの内部で何が起こっているかを想像していただきたいのです。つまり、切り返しの一瞬、グッとインナーマッスルを駆使して体の内側で踏ん張ります。

テイクバックからフォローまで、ゴルフスウィングの一連の動作のなかで必死にチカラを入れるのは、この切り返しで大腰筋を使ってマイナス方向(バックスウィング方向)にチカラを入れるときだけです。プラス方向(インパクト方向)には、チカラは不要です。プラス方向に使うのは下半身ですが、下半身の力は圧倒的に強いため、力が余っています。それを生かすのは逆パワーです。

逆パワーをマスターしていなければ、プラス方向にチカラを入れることで、下半身がフラフラしたり、フォローで泳いだり、ロクなことはありません。下半身の力は、どんなヘタな人でも十分出ています。それがうまく使えないのは、逆パワーが使えないからです。下半身の力を使うためには、大腰筋を使って、この一カ所だけ、マイナス方向にチカラを入れることが必要です。下半身リードといっても、それは大腰筋が逆パワーを発揮して、はじめてほんとうの意味で下半身リードになります。

ゴルフスウィングはリラックスせよとよくいわれますが、全身をゆるゆるにしていては打てるはずがありません。マイナス方向にチカラを入れることで、プラス方向のチカラと拮抗するから、切り返しでは緊張感のような空気が漂い、その拮抗によって土台ができるから、上体はリラックスできるのです。
で、3番めの要素として、土台の上でおこなう上体の脱力も重要です。上体が脱力しないと、結局のところ肩の遅れはつくれません。上体にちょっとでも力が入ると、上体の筋肉が硬直して肩は前に出てしまいます。ですから、完全な脱力が肩の遅れを生むわけです。

これら3つの動作を同時におこなうことが必要です。

切り返しのほんの一瞬の切り返し動作はスウィングのすべてともいえる長~い一瞬です。その短い時間に、ゴルフスウィングの本質を凝縮した3つの動作を、外見的には静的な状態のまま体の内部でおこなうというのが逆パワーです。これがうまくできてはじめて、(1)下半身リードで(2)肩が遅れた形で、(3)手が遅れてくる・・・というスウィングになります。

02振り遅れる勇気

■正しいスウィングを習得するために、
振り遅れの練習をする勇気がありますか。

アマチュアゴルファーがなかなか上達しないのは、なぜでしょうか。この問題を私は長年追求してきました。 アマは「大きな筋肉を使ったスウィング」ができないからであるというのがその答えです。その考えは、一貫しています。

ただし、表現についてはどうかな、と思います。「体を主体にしたアスレチックスウィング」ができない、といういい方でもいいと思います。

昔と比べて、クラブが長尺化したため、極端な手打ちの人が減り、リリース打法の人がふえています。それもまた、「大きな筋肉を使ったスウィング」ができないということを意味します。

とりあえず、表現には悩みますので、「体を主体にしたアスレチックスウィング」といいます。

アマが「体を主体にしたアスレチックスウィング」をマスターするのは、とてつもなくむずかしいことです。まず、「プロとアマは違うのだ」という前提に立って考えなければなりません。

プロとアマは違うことをやっています。「体を主体にしたアスレチックスウィング」をめざすアマは、スウィング以前に行わなければならない「重要」なレッスンがあります。それは、大きな筋肉を目覚めさせるレッスンです。世間にある従来のメソッドではその部分が完全に欠落しているので、いくら理論書を読みあさって研究しても、あまり成果が上がらないのです。

タイガーがこうしているとか、石川遼くんがこうやっているとか、さまざまな情報が本や雑誌にあふれています。しかし、アマにとってもっとも重要なことは、プロが大きな筋肉を使って打っているのに対して、アマは小さな筋肉を使っているということです。

いまアマチュアゴルファーに必要なものは、「手を使ったノン・アスレチックスウィング」のから脱却し、「体を主体にしたアスレチックスウィング」のレベルに到達するためのメソッドです。

これは、一般に想像されているよりはるかに困難なテーマです。そういうことを真剣に追求したメソッドはいまだかつてありません。何よりも、ゴルフ雑誌をみればわかりますが、アマ自身がプロの秘密を知りたがっています。ですから、雑誌の情報はプロの秘密を伝えることに注力しています。

しかし、プロとアマは全然違うのです。ですから、その部分のみに集中した練習が必要です。

これは困難ですが、チャレンジする価値はある課題です。何としてでも、「体を主体にしたアスレチックスウィング」をマスターすべきだと思います。マスターすれば、雑誌に書いてあるプロの言葉も、急にいきいきと理解できるようになります。プロと同じ議論ができるレベルになるからです。そうでなければ、プロの言葉もなんとかに念仏です。いまこそ、あなたの眠っている大きな筋肉を、叩き起こそうではありませんか。

これから連載する「逆パワー・メソッド」は、果敢にもこの問題に真正面から取り組みます。 おおまかにいって、内容は2つのパートに分かれます。

ひとつの例示ですが、スライスで悩むアマは振り遅れの練習をしなければなりません。奇をてらっているのではありません。振り遅れを恐れることが、スウィングをますます悪くするばかりか、開眼へと至る道をふさいでいます。これは悪循環です。このことを知っていただきたいのです。こういった一連の話を前半でやります。

後半では、実践面を細かく説明します。やることは、第1に、切り返しの練習です。第2に、インパクトあたりの動作を変えることです。どちらも、スウィングを完全に取り替える心構えでトライする必要があります。後者については、意識の問題がからむため、なかなかむずかしい部分があります。

大きな筋肉とは体幹の筋肉のことです。以前は、これを「背中の下部の筋肉」といっていたのですが、訂正します。胴体の中を通るインナーマッスルである大腰筋です。しかし、大腰筋は「大きな筋肉」というほど大きいわけではありません。そうすると、副題につけた「ビッグマッスルを叩き起せ」というのも、変えなければならないのでしょうか。

結論をいうと、そういうわけでもないと考えています。切り返しで大腰筋を使うことが重要ですが、それだけではなく、インパクトのタイミングを遅くすることも重要です。2つがあいまって、下半身の大きな力をクラブヘッドに伝えることができます。つまり、ここでは「大きな筋肉」は下半身の筋肉ということになります。下半身の筋肉の力で打つために、2つのポイントをマスターする必要があります。若干、「大きな筋肉」の定義が変わりました。すみません。

切り返しで大腰筋を正しく使い、リリース打法をやめて、遅いタイミングで打てるようになれば、スウィングはみちがえるように変わります。こうした2段階論は、以前と変化していません。

それができると、タメの効いたプロのようなダウンスウィングも簡単です。アタマを残した軸のぶれないインパクトもあなたのものです。左ヒジがきれいにたたまれたフォローの形、抜けのいいショットもマスターできます。安定した美しいフィニッシュもバッチリです。

というわけで、体幹を使い、遅いタイミングで打つ方法がわかると、ゴルフスウィングは驚くほどうまく行くという話を展開します。と、まあ、こんな感じであなたの大きな筋肉をいやでも目覚めさせたいと思います。

01あなたのビッグマッスルは眠っています。 なぜ、目覚めないのでしょうか

小さな筋肉を使ったスウィングを
上達させているアマゴルファー。

いろんなレッスン書を買い込んで、じっくり読んで何年も、何十年も練習して、そこそこうまく打てる。しかし、どういうわけか、アスレチックな本格スウィングにならない。そんな悩みを抱えていませんか。

たぶん、あなたのビッグマッスル(大きな筋肉)は眠っています。

誰でも立派なビッグマッスルを持っているのですが、使っていないのなら宝の持ちぐされです。このビッグマッスル・メソッドは、そういった使われていない高性能エンジンを始動し、スムーズに回転させるために開発されたものです。

どのような方法でビッグマッスルを目覚めさせるのか、この問いに答えるために、まず、なぜビッグマッスルが眠っているのかについて考える必要があります。なぜ、アマチュアゴルファーには大きな筋肉を使ったスウィングはむずかしいのでしょうか。なぜ、十分に練習したにもかかわらずアスレチックな本格スウィングは習得できないのでしょうか。
これは、奥の深い質問です。それは、あなたが小さな筋肉を使ってスウィングしているからです。

ここで、ひとついっておきます。大きな筋肉を使ったスウィングと、小さな筋肉を使ったスウィングは完全に異質なもので、両者の間に連続性はないということです。誰でも大きな筋肉を多少は使っていますし、小さな筋肉も多少は使っています。ですから、プロが大きな筋肉を使ったスウィングで、アマが小さな筋肉を使ったスウィングであるというのは、表現上、まぎらわしいかもしれません。

大きな筋肉を使ったスウィングはアスレチックスウィング。小さな筋肉を使ったスウィングはノン・アスレチックスウィングといってもいいです。両者は似たようなものだと思われるかもしれませんが、そういうわけではないです。アスレチックスウィングとノン・アスレチックスウィングは完全に異次元の世界に属するものです。

「大きな筋肉を使ったスウィング」の人は、練習すればするほど「大きな筋肉を使ったスウィング」が上達します。「小さな筋肉を使ったスウィング」の人は、練習すればするほど「小さな筋肉を使ったスウィング」が上達します。そのまま順調にそれぞれが上達したとして、将来にわたって両者は平行線のままです。

練習を積み重ねているうちに、小さな筋肉を使ったスウィングから徐々に中くらいの筋肉を使ったスウィングに移行し、最後には大きな筋肉を使ったスウィングが完成する。そういう漸進的な移行は、残念ながらあり得ないと思います。使っている筋肉が別の部位なので、徐々に移行することはありえないのです。

これは、重大な指摘です。あらゆるレッスン書には書いていない、重大問題だと思います。ノン・アスレチックスウィングをしているアマチュアゴルファーは、いまのまま練習をしても、アスレチックな本格スウィングにならないということです。体を回転させて打つ練習をすればボディターンになると思っているかもしれませんが、それは考え違いです。たぶん、あなたは一生懸命練習して、「小さな筋肉を使ったスウィング」を上達させているだけではないのかと思うのです。

ということは、ここでの結論は、アマはレッスン書を読んで一生懸命練習に取り組む前に、「大きな筋肉を使ったスウィング」に大改造しなければならないということです。ところが、それはアタマで考えるほど簡単ではありません。両者は完全に別の世界にいるので、実際に「小さな筋肉」から「大きな筋肉」への改造に成功したというアマチュアゴルファーは、日本中を探してもきわめて少数ではないかという気がします。

大きな筋肉を使ったスウィングと、小さな筋肉を使ったスウィングの間には飛び越えなければならない溝があります。そして、溝は予想以上に大きく深く、ほとんどのゴルファーは飛び越えられないままゴルフ人生を終えるというのが、現実であると思います。

00はじめに

レッスン書は素晴らしいのですが、
なかなか上達しない不思議。 

■ボディターンブームから学ぶこと

「ビッグマッスルを叩き起こせ」を書いた、さらに5年ほど前から、日本ではレッドベターのスウィング理論が日本で流行していました。「ボディターン」です。その教えを日夜研究するゴルファーが続出しました。

ところが、自称ボディターン派のスウィングを見ても、「うまく打っているなあ、さすがボディターンだ」と納得できる例には、ほとんど出会ったことがありません。確かにコンパクトでカタチはきれいになっているのだけれど、どういうわけかプロのスウィングとはやっぱり違うスウィングをしていました。
ボディターンがブームになってからわかったことといえば、とにかくボディターンはむずかしいという事実です。アマチュアゴルファーにはボディターンは向いていないと主張する人もいました。

最近はボディターンという言葉はあまり使わなくなりました。しかし、ボディターンとよんでいたものを広義にとらえて、プロのようなアスレチックスウィングと考えても状況は同じです。つまり、いろいろ練習しても、プロのようなアスレチックスウィングはむずかしいということであす。

ボディターンのブームの後、スウィング理論の状況がどうなっているのかというと、ひと言でまとめるのはむずかしいと思います。その後、ゴルフ界はタイガー・ウッズの黄金時代が到来し、彼のスウィングがゴルフ界全体に影響を与えました。ただし、タイガーのスウィング理論的はオーソドックスであり、スウィング理論を書き換えたというわけではないと思います。

ゴルフの主流理論は、全体に同じ方向を向いていると思います。レッドベターがベン・ホーガンを再評価し、ひとつの流れをつくり、そのなかでタイガー・ウッズを参考にしつつ、各レッスンプロが独自色を加味しているという方向であると思います。ただし、タイガー・ウッズのスウィングは超人的であり、彼のスウィングを直接的に参考にするのはむずかしいと思われます。

日本のレッスンプロ(あるいはレッスン書)でメジャーなのは江連忠氏、内藤雅士氏、谷将貴氏、金谷多一郎氏あたりですが、彼らが独自色の強いオリジナルの理論を主張しているというよりも、基本的な理論は同じような内容になっています。

主流派スウィング理論は、基本的に体で振れといっています。これは、昔から同じです。この体で振るスウィングを広義のボディターンと考えたいと思います。他方、若干の異端派のスウィング理論もあり、それはプロのようなアスレチックスウィングをあきらめた人、あるいはそれを否定する人に受け容れられています。

あるいはまた、本格的なスウィングを根本的に直すことはあきらめた、その場しのぎの対症療法のようなレッスンも存在します。スライスを直すために、早めのリリースをすすめたりといった方式です。しかし、そういう対症療法では、決してうまく行かないのがゴルフスウィングというものです。

そして、ゴルフ雑誌には毎週毎週、これでもかというほどレッスンが掲載されています。その内容は洗練されています。

10年前と比べると、もうひとつ重要な変化があります。クラブの進化です。とくにドライバーは大型化し、なおかつ長尺化しました。長尺化すると、手先で振るのがむずかしくなり、昔と比べると極端な手打ちの人は減りました。しかし、だからといって、アマが「プロのスウィング」と同じになったというわけでもないと思います。

つまり、ボディターンといってもいいし、プロのようなアスレチックスウィングといってもいいのですが、そういう「いい」スウィングをアマがうまく習得できているかというと、できていないと思います。レッスン書が進化しても、クラブが進化しても昔とまったく同じで、ゴルフスウィングはむずかしいのです。

ゴルフには、プロができて、アマはできないことがあります。アマがうまくいかない原因は何か、それを根本的に追求したのが当メソッドです。10年以上にわたって、それを熟成させてきました。

しかし、ゴルフ理論が進化し、クラブも進化したけれど、アベレージゴルファーのスウィングを直すためのメソッドはあまり充実していないというのもまた事実です。

ゴルフスウィングがむずかしいのは、アマゴルファーを待ち受ける「落とし穴」があるためです。それは、アマの「落とし穴」です。その「落とし穴」とは何か。あるいは、「落とし穴」を乗り越える方法はあるのか、といったことを追求しています。そうすることでしか、プロのようなスウィングにはならないと考えています。これは簡単な道ではありませんが、大きな努力を払う価値があると思います。